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感染症

繰り返すヘルペスにアメナリーフのPIT療法「備える治療」

ヘルペスを何度も繰り返す方にとって、ヘルペスは憂鬱な問題です。
ヘルペスになったときに、すぐに病院に行けないこともあるかと思います。
そのような患者さんに、PIT療法「備える治療」という選択肢があります。
今回、新たにアメナリーフという薬剤のPIT療法が承認されたので、ご紹介します。

単純ヘルペスとは?

ヒトヘルペスウイルス-1,2(HSV-1,2:単純ヘルペス)によっておこる感染症で、口周囲や性器周囲に小さな水疱を生じる病気をヘルペス(単純疱疹、単純ヘルペス)と呼んでいます。
口周囲にできるものを「口唇ヘルペス」とよび、HSV-1によっておこることが多いです。
性器周囲にできるものを「性器ヘルペス」とよび、HSV-2によっておこることが多いです。
水疱ができる際に、一般的にはピリピリした感覚、ヒリっとした灼熱感、かゆみを伴います。

下口唇にヘルペスの水疱が2つ(赤矢印)

単純ヘルペスウイルスに1度感染すると、ウイルスは神経の奥に潜伏して生涯いなくなることはありません。
そして、免疫力が低下した時、ストレスが溜まった時などに再び発症します。
再発頻度は患者さんそれぞれで、なかには1年に何度も単純ヘルペスを繰り返す再発しやすい患者さんもおられます。

PIT療法って何?

従来は、ヘルペスの発疹が生じた際にウイルス薬を処方する方法しかありませんでした。
この場合、単純ヘルペスが発症した時に診療所をタイミングよく受診しなければいけません。

PIT療法は「Patient Initiated Therapy」の略語で、ヘルペスの初期症状が生じた時に、患者さんの判断で薬を服用する治療法です。
薬はPIT療法用として事前に処方し、単純ヘルペスの症状が出るまでは、初期症状に備え携帯していただきます。

2019年2月に「ファムビル」という抗ウイルス薬でPIT療法が承認されました。
そして、2023年2月に「アメナリーフ」という抗ウイルス薬でもPIT療法が追加承認されました
「アメナリーフ」はもともと帯状疱疹で処方できる抗ウイルス薬でした。
今のところ、口唇ヘルペスや性器ヘルペスの発症している時にアメナリーフを処方することはできませんので、PIT療法としてのみ口唇ヘルペスや性器ヘルペスで使用することができるということになります。

アメナリーフのPIT療法

通常、口唇ヘルペスや性器ヘルペスの初期症状出現後6時間以内に、アメナリーフを1200mg(6錠)を食後に1回のみ内服します。
次回再発分の処方は1回分のみ処方できます。

アメナリーフのPIT療法の対象患者さん
  • 口唇ヘルペスまたは性器ヘルペスの同じ病型の再発を繰り返す方
  • 再発の初期症状を正確に判断できる方

※ 妊婦又は妊娠している可能性のある女性、授乳中の女性は服用できません

ファムビルのPIT療法との違い

2019年から「ファムビル」という薬剤によるPIT療法が保険適応となっていました。
今回の「アメナリーフ」のPIT療法と、ファムビルのPIT療法には若干の違いがあります。
ファムビルのPIT療法は、1年におよそ3回以上の再発を繰り返す方が適応でしたが、アメナリーフのPIT療法は再発する方であれば回数は問われていません。
それ以外にもアメナリーフのPIT療法の方が優れている点として、1回の内服で済む内服する錠数は腎機能の影響を受けないという利点があります。
一方、デメリットとしては、食事の影響を受けるため、アメナリーフのPIT療法は食後に内服しなければいけません
食間の際は内服する前に軽食をとっていただいてから内服する方がよいでしょう。
また、現在の薬価だとアメナリーフのPIT療法の方が値段が高くなります。2023年3月現在、ファムビルのPIT療法は3割負担で約770円、アメナリーフのPIT療法は3割負担で約2200円です。

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