Dr.梶浦

第3回 皮膚外科学の魅力 〜皮膚科医が手術をする最大のメリット〜

院長の上田です。

今回は後輩の梶浦先生にお願いして書いてもらった記事です。
第1回の記事を読んでいただければ分かりますが、彼は筋萎縮性側索硬化症(ALS)という病気に罹患しています。

そんな彼に「皮膚科の魅力」「皮膚科医を続けたからこそ得られた考え」などを記事に書いてもらえたら有益な情報になるのではないかと考えて今回の企画をお願いしました。

第3回
皮膚外科学の魅力〜皮膚科医が手術をする最大のメリット〜

前回の補足になりますが、大学4年生で臨床医学を学んでいく際には、人体の各臓器ごとにそれぞれの構造や疾患について勉強していきます。その時にどの臓器の勉強が面白かったか?その経験が将来自分が何科を専門にするかにつながっていきます。例えば「心臓」という臓器に興味があり、内科系に進みたいのであれば、循環器内科。外科系に進みたいのであれば心臓血管外科という感じです。

私は将来何科を自分の専門分野にするか悩んでいた時に、皮膚という臓器に1番興味があり皮膚科に惹かれていました。しかし、同時にバリバリ手術をしたいという思いも強く、皮膚科医が手術をするイメージがあまりなかった為、皮膚や皮下組織の手術を専門に行っている形成外科医になるか迷っていました。


しかし、研修医の時に皮膚科をまわっていた際に、皮膚科にも皮膚外科という専門分野があり、手術もバリバリできる事が分かった為、皮膚科医になることを決めました。そして、研修医の時に、当時の皮膚科の教授と医局長に、入局したら手術の勉強のため形成外科に出向させて欲しいとお願いして入局しました。(今考えると生意気な研修医でした…笑)

皮膚科に入局後は、当時皮膚科の医局長であった、敬愛する恩師である新山史郎先生に皮膚外科の基礎を叩き込んで頂きました。

余談ですが、新山先生とは本当に仲良くさせて頂いており、病気になった今でも定期的に「おう、カジ生きてっかー」と言って顔を見に来てくれます(笑)
普通はALS患者にかける言葉ではないのかもしれないですが、病気になってからもずっと、以前と変わらない態度で接し続けてくれる事が、私にとってはすごく嬉しい事なのです。


皮膚科医が手術をすることの最大のメリットは、切除した腫瘍の病理診断が自分達でできるという事だと思います。他の外科系の医師たちは、切除した腫瘍を病理医(病理診断を専門に行っている医師)に依頼して、病理診断してもらうことになります。この過程を自分達でできる事は、とても大きな強みなのです。

10年以上前の梶浦先生との手術(左:梶浦先生、右:院長)

私が形成外科に出向していた時の話ですが、顔面にできた基底細胞癌という皮膚癌の手術を執刀しました。眼のそばにできていた腫瘍で、取り残さない様に眼の縁まで、取れる範囲でかなりギリギリまで切除しました。病理医の診断は「基底細胞癌で取り切れている」というものでした。

私は自分が切除した腫瘍は、必ず自分でも病理診断も行うようにしていましたので、いつものように自分でも病理検体を確認したところ、病理医の診断の通り取り切れてはいましたが、やはり眼のそばはかなりギリギリでした。そして基底細胞癌の組織タイプがモルフェア型という、悪性度の高いタイプでした。なので、術後の経過観察は特に眼の縁の再発に気をつけながら、慎重に長めに診ていく事にしました。

この様に執刀医には執刀医にしかわからない手術をした時の感覚があり、その感覚を持ちながら病理診断をできるということが、皮膚外科医ならではのとても大きなメリットではないかと思います。

執筆者:医師 梶浦智嗣


梶浦先生は、ポジティブにALSを語るコラム(enjoy! ALS)を連載されています。


第1回 私は難病ALSを発症して7年になる41歳の皮膚科医です
第2回 私が皮膚科を選んだ理由〜皮膚科の魅力とは〜
第3回 皮膚外科学の魅力 〜皮膚科医が手術をする最大のメリット〜

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