Dr.梶浦

第2回 私が皮膚科を選んだ理由 〜皮膚科の魅力とは〜

院長の上田です。

今回は後輩の梶浦先生にお願いして書いてもらった記事の2本目です。
第1回の記事を読んでいただければ分かりますが、彼は筋萎縮性側索硬化症(ALS)という病気に罹患しています。

そんな彼に「皮膚科の魅力」「皮膚科医を続けたからこそ得られた考え」などを記事に書いてもらえたら有益な情報になるのではないかと考えて今回の企画をお願いしました。

第2回
私が皮膚科を選んだ理由〜皮膚科の魅力とは〜

皆様は医師が将来何科に進むか、どうやって決めていると思いますか?
それをお話しする前に、まず医学部のカリキュラムについて簡単にお話ししたいと思います。

医学部1年生 一般教養
医学部2年生 解剖学や生理学などの医学的な勉強が始まる
医学部3年生 基礎医学と、基礎的な臨床医学の勉強をしていく
医学部4年生 本格的な臨床医学の勉強が始まり、学年末に5年生に上がる為の全国統一試験がある
医学部5年生 病院実習。1年間を通して、全ての科をまわり実際の臨床現場に出て学んでいく
医学部6年生 病院実習の続きと、卒業試験と医師国家試験の勉強。卒業試験合格後に医師国家試験があり、それに合格したら医師になれる
医師1~2年目(初期研修医) 内科系、外科系の中から、それぞれ自分の興味のある科を複数選び研修していく
医師3年目~ 自分の専門の科を決めて、その科で働いていく

大学によって、多少カリキュラムに差がありますが、だいたいこの用な流れで医師になり、専門の分野に進んでいきます。多くの医師は5年生の病院実習で、自分が何科に興味がありあるのか?何科に向いているのか?を考えながら、いくつか候補を決めていき、研修医の時に実際にその科で働いてみて、最終的に自分の専門の科を決めていきます。


私の場合は祖父が脳神経外科、父が外科という血筋もあったのか、やはり手術がしたいという気持ちが強くあり、まず外科系に絞りました。
その中でも形態学(生物学の中の一分野であり、生物の形や構造を研究する学問)に興味があったため、皮膚にできる発疹の色や形や構造、分布などで主に診断をつけていく皮膚科学に興味を持ちました。
また皮膚科はアレルギー疾患や膠原病などの内科系の病気も診ますし、皮膚腫瘍の切除など外科系の事もできるのも魅力と考え、皮膚科に進みました。特に私の専門分野は皮膚外科であり、皮膚外科には強い思い入れがあるので、次回お話ししたいと思います。


皆さんから見た皮膚科医のイメージは、皮膚の表面にできた「発疹(ぶつぶつ)」を目で見て診断する医師だと思います。
しかし、実際は発疹の下で何が起こっているのか?、どのような細胞が出ているからこの様な発疹ができているのか?を同時に考えながら診察しています。これが皮膚病理学であり、皮膚科学の中で一番奥深く、面白い学問ではないかと私は思います。皮膚病理学を理解することで、発疹を平面ではなく、発疹の下の状態を含めた立体として捉えることができるようになってきます。

そうなると、発疹を見ただけで、皮膚病理が頭の中に浮かんできますし、反対に皮膚病理を見ただけで、発疹を見ていなくても発疹を想像することができます。
このように、発疹と皮膚病理が相互に繋がって、発疹を断面と供に立体として捉え、病態を理解できた瞬間が皮膚科医をやっていて一番面白いなと思います。

執筆者:医師 梶浦智嗣


梶浦先生は、ポジティブにALSを語るコラム(enjoy! ALS)を連載されています。


第1回 私は難病ALSを発症して7年になる41歳の皮膚科医です
第2回 私が皮膚科を選んだ理由〜皮膚科の魅力とは〜
第3回 皮膚外科学の魅力 〜皮膚科医が手術をする最大のメリット〜
第4回 医師として生きる

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