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Dr.梶浦

第5回 研修医の思い出

院長の上田です。

今回は後輩の梶浦先生にお願いして書いてもらった記事です。
第1回の記事を読んでいただければ分かりますが、彼は筋萎縮性側索硬化症(ALS)という病気に罹患しています。

そんな彼に「皮膚科の魅力」「皮膚科医を続けたからこそ得られた考え」などを記事に書いてもらえたら有益な情報になるのではないかと考えて今回の企画をお願いしました。

第5回
研修医の思い出

「研修医」とは医師免許を持っている医師でありながら、世間からは学生と医師の間の存在として認知されており、まるで半人前の肩書きを背負っているような立場にあります。

医師になるには6年間の大学生活で、膨大な量の知識を詰め込み、医師国家試験に合格しなければいけません。そんな険しい道を突破して、晴れて研修医一年目になるのですが、知識はあってもそれはまだ机上の知識であり、実戦で使えるような実用的な知識にはなっていません。そこから臨床経験を積み重ねていき、はじめて自分の血となり肉となる「生きた知識」になっていくのです。

しかしそれは臨床経験を積んでから分かることであり、研修医一年目ではまだ分かりません。


いざ仕事を始めたら、病院用のパソコンの使い方もわからない、薬剤の処方の方法もわからない、採血や点滴のルートも取った事もない。できない事だらけでした。

指導医から「これ看護師さんに指示出してきて」と言われ、看護師さんに指示を出しに行っても、「ここの部分が抜けてるから、上の先生に確認してから来て」と言われ、指導医の所に舞い戻る。最初の頃は一人では何もできないので、そんな伝書鳩のような動きをしていましたが、少しずつ仕事を覚えていき、やっと人生初めての患者さんを受け持てることになりました。


睡眠時無呼吸症候群の少年でCPAPという夜間睡眠時の呼吸をサポートしてくれる機械を導入する目的で入院してきました。

私は受け持ち医になれたことが嬉しくて、まだまだ自分にできることは少ないですが、時間があればその少年の所に通って話を聞くようにしていました。その少年も徐々に私に心を開いてくれて、色々な悩みを打ち明けて相談してくれました。そして、退院時に「先生が担当で良かったです。ありがとうございました。」との内容のお手紙をくれました。

自分の非力さを痛感していた時期に、その温かい手紙が心に染み込んできて、「あー医師なって良かったな〜」と思わせてくれました。そして、誠心誠意向き合う事の大切さを教えてくれました。その手紙は自分の医師の原点としてずっとサイフの中にしまっておき、忙しくて自分に余裕がない時などに読み直して初心を忘れないようにしていました。

医師は患者さんに育ててもらいながら、成長していくのだなぁとつくづく思います。

執筆者:医師 梶浦智嗣


梶浦先生は、ポジティブにALSを語るコラム(enjoy! ALS)を連載されています。


第1回 私は難病ALSを発症して7年になる41歳の皮膚科医です
第2回 私が皮膚科を選んだ理由〜皮膚科の魅力とは〜
第3回 皮膚外科学の魅力 〜皮膚科医が手術をする最大のメリット〜
第4回 医師として生きる
第5回 研修医の思い出

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