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Dr.梶浦

第1回 私は難病ALSを発症して7年になる41歳の皮膚科医です

院長の上田です。

今回は後輩の皮膚科医、梶浦先生にお願いしてブログを書いてもらいました。
記事を読んでいただければ分かりますが、彼は筋萎縮性側索硬化症(ALS)という病気に罹患しています。
ALSというと「難病」のイメージを持つ方も多いのではないでしょうか。
しかしながら彼は今も皮膚科関連の仕事を続けています。
そしてポジティブにALSを語るコラムを連載されています。

そんな彼に「皮膚科の魅力」「皮膚科医を続けたからこそ得られた考え」などを記事に書いてもらえたら有益な情報になるのではないかと考えて今回の企画をお願いしました。

第1回
私は難病ALSを発症して7年になる41歳の皮膚科医です
自己紹介

いきなりこんな自己紹介をしても、とまどう方が多いでしょう。
実は私は上田先生と同じ北里大学病院皮膚科の医局の後輩です。「ブログに記事を書いてくれないか」と頼まれ、もちろん断る理由もなく、快諾しました。なので、第一回目の今回は、私が何者なのかについてお話ししたいと思います。

私と上田先生の経歴には共通点がとても多く、私の経歴は

『北里大学医学部卒業後、皮膚科に入局。横浜労災病院 皮膚科、昭和大学藤が丘病院 形成外科(皮膚外科研修)を経て、カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)に留学。留学同年、皮膚科専門医を取得』

ただ、決定的に違うことは34歳でUCSDに留学している最中に難病ALS(筋萎縮性側索硬化症)を発症したという事です。


ALS(筋萎縮性側索硬化症)という病気

ALSという病気の事を知らない方がほとんどだと思いますので、どんな病気かを簡単にご説明したいと思います。

筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、筋肉を動かす運動神経が選択的に障害され、徐々に全身の筋肉が動かせなくなっていく、進行性の神経疾患です。

初期症状は手に現れることが多いですが、患者さんによっては口や足に症状が現れることもあります。進行すると徐々に自分の意思で身体を動かすことが難しくなり、ペンやハシが握れなくなったり、歩行が困難になっていきます。

口や喉が動かなくなると、話す、食べるといった行為が困難になり、誤嚥する可能性も高くなります。さらに進行すると、自身で呼吸することができなくなり、生きていく為には人工呼吸器が必要となります。また、ALSでは筋肉を動かす運動神経のみが選択的に障害されるため、感覚は残ります。また、意識ははっきりしており、精神的なはたらきは障害されないことも大きな特徴です。

日本における患者数は1万人弱にのぼると報告されており、10万人あたり7~11人程度の有病率であるといわれています。好発年齢は50~70歳くらいですが、まれではあるものの若い年代で発症することもあります。私の様に30代で発症するのは全体のわずか10%程度です。


人間の原動力は考える力

発症する原因はわかっておらず、治療方法もありません。

人工呼吸器を付けなかった場合、平均余命は2年〜5年と言われています。
しかしながら、この過酷な病気と共に生きていく人は少なく、人工呼吸器を付ける人は20~30%程度に過ぎません。

そんな難病中の難病と言われているALS。映画やドラマでもたびたび取り上げられており、2014年には「アイスバケツチャレンジ」というALSの研究を支援する運動がアメリカから始まり、日本も含め世界各国に広がっていきました。なので、どんな病気なのかは何となく知っている人も多く、治療法もない、辛くて残酷な病気というイメージが浸透しています。
確かにその様な一面もあるのは事実です。ただ、それがすべてなのか?そんな事はありません。ALSは運動神経が選択的に障害される病気であり、体は動かせなくなっていきますが、思考力は衰えません。人間の原動力は考える力です。考える力さえ残っていれば、人間は無限に活動的になれるのです!


『enjoy!ALS』

今の私は、自分の力では呼吸することができない為、人工呼吸器を装着しています。また、体は全く動かす事ができず、声も出せません。目と口がわずかに動かせる程度です。
しかし、それだけ動かせれば、できる事は山ほどあります。
歯のわずかな動きでiPadを操作して、今でも皮膚科医として月100人〜300人の患者さんを遠隔診療しながら、少しでも同じALS患者さんのお役にたてるように、TEIJIN(帝人株式会社)さんの運営している、NsPace(ナースペース)と言う訪問看護師さん向けの情報発信サイトに 「enjoy!ALS」というタイトルで、ALSに関するpositiveな情報を書いたコラムを毎月連載しています。全24回予定ですので、良かったら是非見て下さい!↓

他にも、目の動きだけでパソコンのPowerPointを操作してスライドを作り、看護大学や介護福祉士専門学校で「ALSとはどんな病気で、どのように在宅での生活をおくっているのか」などの講義も行なっています。


以上が、簡単ですが私の自己紹介になります。このブログでは私なりに皮膚科の事を書いていきたいと思っております。(ちなみにこの文章も全て歯で書いています。)

執筆者:医師 梶浦智嗣


今後も少しずつ梶浦先生にブログの記事を書いてもらう予定です。


第1回 私は難病ALSを発症して7年になる41歳の皮膚科医です
第2回 私が皮膚科を選んだ理由〜皮膚科の魅力とは〜
第3回 皮膚外科学の魅力 〜皮膚科医が手術をする最大のメリット〜
第4回 医師として生きる
第5回 研修医の思い出

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