汗ばむ季節となりました。
手汗の多い方は、とても気になる季節だと思います。
さて、日本ではじめて、手のひらの多汗症に保険適応の薬が発売されました。
手汗でお悩みの方、ぜひこの機会に皮膚科の受診をご検討ください。
原発性手掌多汗症
医学的に手のひらに汗を多くかく病気(他の病気に続発したものを除く)を「原発性手掌多汗症」といいます。
原発性手掌多汗症の患者さんの有病率は5.33%1)であり、約20人に1人が困っていることになります。
おもに幼少児期から思春期に発症することが多い疾患です。
今まで十分な治療法もなく、わざわざ病院に罹って治療していない方のほうが多いと推測されます。
手汗くらいで病院……と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、「書類が手汗でぬれる」「業務に差し支える(美容師、エステシャンなど)」「握手が気になる」「スマホが操作できない」「スマホが錆びる、壊れる」「鉄棒ですべって落下する」「空手や剣道で床がすべる」「手をつなげない」など日常の生活に支障が生じることが多く、なかには「うつ病」「登校拒否」「進学拒否」まで発展することがあります。
「原発性手掌多汗症」の診断は、一般的にHornbergerらの原発性局所多汗症の診断基準が用いられます。
手掌(手のひら)に明らかな原因がないまま6カ月以上も過剰な発汗を認め、以下の6症状のうち2項目以上あてはまる場合に診断されます。
原発性手掌多汗症の診断基準(Hornbergerらの診断基準)
- 最初の症状がでるのが25歳以下であること
- 左右両方で同じように発汗がみられること
- 睡眠中は発汗が止まっていること
- 1週間に1回以上多汗の症状がでること
- 家族にも同じ疾患の患者さんがいること
- 手汗によって日常生活に支障をきたすこと
アポハイドローション
アポハイドローションは2023年6月に発売された、日本初の原発性手掌多汗症の保険治療薬です。
手の発汗は、交感神経から出るアセチルコリンという物質が汗腺に指令を与えて生じます。
原発性手掌多汗症の患者さんは、この指令が激しく生じるため手汗が多量となります。
アポハイドローションはこの指令をブロックします。
アポハイドローションの注意点
アポハイドローションを塗った手で目や口を触らないようにしてください。
万が一目に入った場合には、すぐに水で洗い流してください。
子どもの手や目の届かないところに保管してください。
閉塞隅角緑内障、前立腺肥大などで使用できない場合もございますので、診察にてご相談ください。
塩化アルミニウム液、イオントフォレーシス
アポハイドローションは、足の多汗には適応がありません。
足の多汗が気になる方は、引き続き塩化アルミニウム液を販売しております。
また、イオントフォレーシスも行っておりますのでご相談ください。
参考文献
1) Fujimoto T, et al.: J Dermatol 40: 886-90, 2013.