気温が高くなると、どうしても気になってしまうのが「ワキ汗」や「汗のニオイ」ですよね。当院でも、夏が近づくにつれてワキ汗のお悩みで受診される患者さんが非常に増えてまいります。
今回は、憂鬱な夏のワキ汗を少しでも快適に乗り切るための「セルフケア」と、私たちのクリニックでご提案できる「保険適用の治療法」について詳しく解説いたします。
【まとめ】夏のワキ汗対策
・夏のワキ汗は、「温熱性発汗」と「精神性発汗」の相乗効果で悪化
・【衣類】インナーの着用
・【水分補給】水分制限は厳禁。熱中症予防のため、こまめな水分・塩分補給!
・【ニオイ】湿らせたタオルや汗拭きシートで優しく拭き取る
・ワキ汗(原発性腋窩多汗症)に対して保険適用となる塗り薬処方可能(条件あり)
なぜ夏は「異常な汗」に悩まされやすいのか?
私たちが汗をかくメカニズムには、大きく分けて2つの種類があります。
一つ目は、気温の上昇や運動などで体温が上がった際に、熱を逃がすためにかく「温熱性発汗(おんねつせいはっかん)」。
二つ目は、緊張や不安、ストレスなどを感じた際に、交感神経が刺激されてワキや手のひらなどにかく「精神性発汗(せいしんせいはっかん)」です。
夏場は、うだるような暑さによる「温熱性発汗」が常にベースにあります。
そこに、「また汗をかいてしまうのではないか」「服の汗ジミを見られたらどうしよう」という不安や焦りが引き金となり、「精神性発汗」が強く誘発されてしまうのです。
つまり、夏はこれら2つの発汗が掛け合わさることで、ワキ汗の症状が最も悪化しやすい過酷な環境と言えます。
今日からできる!夏のワキ汗セルフケア
まずは、日常生活の中で工夫できるワキ汗とニオイの対策をご紹介します。
【衣類】 インナー(肌着)を賢く着る
暑い日には「なるべく薄着で、素肌に直接服を着たい」と考えがちですが、汗をたくさんかく季節こそ、インナー(肌着)を着ることをおすすめします。インナーには、汗を吸収して肌に留まるのを防ぎ、不快感を和らげながら体温調節をサポートする重要な役割があります。
- 素材選び: 通気性・吸湿性に優れた綿(コットン)などの天然素材が基本ですが、汗が乾きにくいというデメリットもあります。最近は吸水性と速乾性を兼ね備えた高機能なインナーが各メーカーから発売されているため、ご自身に合うものを試してみてください。
- 形状選び: ワキ汗が特に気になる方は、タンクトップやキャミソールタイプよりも、ワキ部分をしっかりカバーできる「半袖タイプ」や「ワキ汗パッド付きのインナー」を選ぶと安心です。
- 洋服の色選び: 汗ジミが目立ちやすいグレーやカーキなどの色は避け、白や黒、あるいは柄物の服を選ぶことで、「汗を見られるかもしれない」という精神的なプレッシャー(精神性発汗)を和らげることができます。
【ニオイ】 汗のニオイを防ぐ拭き取り方
「汗=臭い」と考えられがちですが、実は、出たばかりの汗はほぼ無臭です。皮膚の表面の角質に含まれるたんぱく質や皮脂が酸化したり、細菌によって分解されたりすることで、あの嫌なニオイが発生します。そのため、かいた汗を放置せず、こまめに拭き取ることがニオイ対策の基本です。
ただし、「乾いたタオルで完全に拭き取る」のは逆効果です。 汗には、蒸発する際に体温を下げるという大切な役割があります。完全に拭き取ってしまうと体温が下がらず、また新たな汗をかいてしまいます。 軽く湿らせたタオルやボディシートで、流れる余分な汗とニオイの元となる雑菌だけをサッと拭き取り、皮膚の表面に少し湿り気を残しておくのが上手な拭き方です。
【水分補給】 汗を減らすための「水分制限」はNG!
「汗をかきたくないから、水を飲むのを控える」という方がいらっしゃいますが、これは熱中症や脱水症状を引き起こす大変危険な行為です。
たくさん汗をかいた時には、失われた水分と塩分をしっかり補給する必要があります。目安として、発汗量(体重減少量)の7~8割程度を、塩分濃度0.1~0.2%程度のスポーツ飲料などで補うことが推奨されています。 軽い脱水状態になると喉の渇きを感じにくくなることもあるため、気温が高い日は「喉が渇いた」と感じる前に、こまめに水分を摂るよう心がけてください。
当院でご提案できる「保険適用のワキ汗治療」
セルフケアを頑張ってもワキ汗が気になる、洋服選びが制限されてつらいという場合は、決して一人で我慢せず、医療の力を頼ってください。
実は2020年以前まで、ワキの多汗症(腋窩多汗症)に対する保険適用の塗り薬は存在しませんでした。しかし現在では、保険適応の薬が登場しています。当院では、以下の画期的なお薬を処方することが可能です。
・エクロックゲル
・ラピフォートワイプ
(原発性腋窩多汗症の治療薬)
これらは「ワキの多汗症(正確には原発性腋窩多汗症)」に対して健康保険が適用されるお薬です。
処方には条件を満たしているか確認が必要ですので、診察にてご相談ください。
汗腺に直接働きかけ、汗を出すよう指令を出す「アセチルコリン」という物質をブロックすることでワキ汗を抑えます。
ゲル(ゼリー状のお薬)を塗るタイプのエクロックゲルと、シートでサッと拭き取るタイプのラピフォートワイプがあります。詳細は、診察にてご相談ください。
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参考文献 1) SWEAET vol.2 2022
