アクセス
ホーム
サイトマップ
オンライン順番予約

アトピー

プロトピック軟膏(タクロリムス軟膏)について

アトピー性皮膚炎の外用治療薬であるプロトピック軟膏(タクロリムス軟膏)について解説します。

【まとめ】プロトピック軟膏(タクロリムス軟膏)

・タクロリムス(免疫抑制剤の一種)の軟膏
・ステロイド外用薬のような副作用(皮膚の菲薄化、毛細血管拡張)はほどんどありません
・一時的に刺激感を認めます
・刺激感をいかに回避して導入するかが重要

「プロトピック軟膏」の歴史

「プロトピック軟膏」は、ステロイド外用薬とは異なるタイプの免疫抑制剤である「タクロリムス(Tacrolimus)」の軟膏です。タクロリムスは、1983年に茨城県つくば市の土壌から発見され、放線菌の一種(Streptomyces tsukubaensis)から分離されました。
1999年に日本でプロトピック軟膏0.1%が16歳以上に保険適応となり、2003年に0.03%小児用が2歳~15歳までの小児に認可されました。

発売当初はステロイド以外のアトピー性皮膚炎外用薬として大変画期的でしたが、すでに25年以上の歴史のある外用薬となりました。

現在は先発品は「プロトピック軟膏」、後発品は「タクロリムス軟膏」という名称になっています。

「プロトピック軟膏」の特徴

「プロトピック軟膏」の炎症を抑える強さは、ミディアム~ストロングクラスのステロイド外用薬と同程度とされています。

「プロトピック軟膏」は、ステロイド外用薬の長期間の使用でみられるような皮膚萎縮や毛細血管拡張といった副作用はほとんどありません。そのため、ステロイド外用薬と一緒にうまく用いることで、それぞれの副作用を軽減して長期間の維持に役立ちます。

色々な使い方があります。一例として、よく行われる方法をご紹介します。
以下の図のように悪化時にステロイド外用薬、維持期にプロトピック軟膏を用いる使われ方があります。ステロイド外用薬でよくなってきたら、ステロイド外用薬の上にプロトピック軟膏を重ね塗って徐々に置き換えても構いません。


原則ですが、「プロトピック軟膏0.1%」は16歳以上、「プロトピック軟膏0.03%小児用」は2歳以上15歳以下に使用します。しかしながら成人でも小児用の濃度の低い0.03%を用いることもあります。当院では成人でも0.03%の小児用で開始することが多いです。

プロトピック軟膏の成分であるタクロリムスの分子量は約800です。この大きさはほとんどのステロイドよりも大きい値です。しかしながら、アトピー性皮膚炎の皮膚の状態の悪いところからは吸収される程度の大きさです。そして、正常な皮膚からはほとんど吸収されない程度の絶妙な大きさと考えられています。つまり、プロトピック軟膏は湿疹に塗ると効果がでるが、正常な皮膚に塗ってもほとんど吸収されずに副作用もでにくいという点が、プロトピック軟膏の利点となります。そのため維持期に用いられることが多いです。


一方、免疫抑制剤には複数の種類がありますが、外用薬として使用されるのはタクロリムス軟膏だけです。例えばシクロスポリンという免疫抑制剤は分子量が約1200とタクロリムスよりも大きすぎて、湿疹の皮膚にすら浸透しません。

「プロトピック軟膏」の注意点

塗った直後に、一時的に皮膚の刺激感(ほてり、ヒリヒリ感、かゆみ)が出ることがあります。皮膚の症状が良くなるにつれ、通常、1週間くらいで刺激感はおさまります。なお、刺激感は入浴時に強くなることがあります。

プロトピック軟膏を使用する際には、この刺激感をいかに回避するかが重要となります。当院では以下の方法を推奨しています。

プロトピック軟膏(タクロリムス軟膏)の刺激感の回避方法
  • ステロイド外用薬で一度皮膚の状態をよくしてから導入する
  • 最初はステロイド外用薬の上に少しだけ塗り重ねる
  • 最初は薄く、一部の範囲にぬる → 徐々に塗る量を増やして範囲を広くする
  • 濃度の低い小児用(0.03%)を用いて導入する


タクロリムスは皮膚から吸収されると刺激やかゆみの元となる物質を作り出す神経(皮膚の知覚神経)に働きかけるため、その物質が大量に放出されます。このため、使い始めに刺激となって感じられると考えられています。
しかし、プロトピック軟膏を塗り続けることで刺激やかゆみの元となる物質がすべて放出されることと、刺激やかゆみを感じる神経が慣れて反応しなくなることで、プロトピック軟膏による刺激は徐々に感じられなくなり、それと同時にアトピー性皮膚炎によるかゆみもおさまってきます。


その他の注意事項です。

プロトピック軟膏を塗っている部位には、日焼けランプや紫外線ランプの使用を避けてください。また、塗った部位を強い日光に長時間当てないでください日常生活での外出は問題ありませんが、山や海に行く前の使用は避けて、帰ってから使用してください。
当院では夜の外用を推奨しています。

傷にぬると血中濃度があがるので、傷にはぬらないでください。傷がカサブタになって乾いているところは塗っても問題ありません。

眼のまわりに塗ってもらうこともありますが、眼に入らないように気をつけてください。

複数の外用薬をうまく使おう!

アトピー性皮膚炎に使用する外用薬の代表は「ステロイド外用薬」です。
今もまだ、ステロイド外用の重要性は変わりません。
ステロイド外用薬なくしてアトピー性皮膚炎の治療は成り立ちません。
一方、ステロイド外用薬に副作用があるのもまた事実です。

アトピー性皮膚炎は慢性的に湿疹を繰り返す疾患のため、治療期間は長期にわたります。
ステロイド外用以外の治療薬をうまく使用することで、アトピー性皮膚炎を上手にコントロールしましょう。

プロトピック(タクロリムス)軟膏は、ステロイド以外の外用薬の中では効果の高いものです。
刺激症状(ほてり、ヒリヒリ感、かゆみ)をうまく対応すれば非常に効果的に使用できます。

関連記事

最近の記事
  1. 夏に受診がふえる皮膚科の病気

  2. プロトピック軟膏(タクロリムス軟膏)について

  3. 「ベピオウォッシュゲル5%」ニキビの治療