アトピー性皮膚炎において採血検査は必須ではありませんが、アレルギー素因の確認や病勢判定の参考となるバイオマーカーを採血することがあります。今回はアトピー性皮膚炎における検査項目を解説します。
【まとめ】アトピー性皮膚炎の採血検査
・アレルギー素因や病勢をみるために行われる
・代表的な検査項目:IgE値、TARC値
・特異的IgE値の解釈には注意が必要
目的
アトピー性皮膚炎では時に採血をおこなうことがあります。その目的は、
1.病気の「背景」を知るため
2.治療方針を立てるため
が主な目的となります。
検査項目
血清総IgE値
基準値:173 IU/mL以下
IgEはⅠ型アレルギー反応(即時型反応)に関わる抗体で、アトピー患者さんの血液中で高値になることが多いです。高値だとアトピー素因(≒アレルギー体質)があることを示します。また長期の経過の病勢を反映します。
ただし、10~20%のアトピー性皮膚炎の患者さんではIgEが低値~基準値内であり、高値とならないことがあります。IgEが高くないアトピー性皮膚炎を、内因性アトピー性皮膚炎として分類する概念があります。
特異的IgE値
特定の物質(アレルゲン)に対するIgE値を測定。
ダニ、ほこり、花粉、真菌、食物など様々なアレルゲンの検査項目があります。
定量の値(数値)で計測され、その値の高さによってclass 0~6で評価される方法が一般的です。
他にも、当院では「イムノキャップ ラピッド」という検査キットを導入しています。こちらのキットは、指先からのわずかな採血により小さなお子様や静脈採血が苦手な患者さんにも実施しやすい検査です。結果は定性的に「―」「+」「++」と表されます。
調べてみたい項目があれば採血前にご相談ください。検査項目にあるか、検査するべきかご相談いたします。
特異的IgE値の検査結果の解釈には注意が必要です。
必ずしも「値が高い」=「原因」とは限りません。
例えば、摂取しても何も症状が出ないにもかかわらず、特異的IgE値が高くなることがあります(疑陽性)。その場合は、たとえ特異的IgEが高くてもアレルギーとはいわず、制限する必要もありません。
血清TARC値(Thymus and Activation-Regulated Chemokine)
基準値:450 pg/mL未満(16歳以上)、743 pg/mL未満(2歳以上~16歳未満)
皮膚の炎症マーカー。CCL17とも呼ばれるケモカイン。Th2細胞を遊走させるケモカインで、ケラチノサイトなどから産生されます。その時の皮膚症状を評価する採血項目として、LDHや好酸球よりも鋭敏に反映します。
末梢好酸球数(Eosinophil)
基準値:血液中の割合 0.7~8.9 %、絶対数 70~450 /μL
アレルギー性炎症に関わる白血球の一種。IL-5により骨髄より産生誘導される。アトピー性皮膚炎の病勢を反映します。
血清LDH値(Lactate Dehydrogenase)
基準値:124~222 IU/L
細胞障害により遊離されて血中の値が上がります。アトピー性皮膚炎では皮膚の細胞から遊離されると考えられるため、アトピー性皮膚炎の病勢を反映します。皮膚以外の細胞が障害された時も上昇するため、他の病気でも上がりやすい点に注意が必要です。
血清SCCA2値
基準値:1.6 ng/ml未満
Th2サイトカインにより上皮細胞から産生される。15歳以下で保険適応があります。
治療内容による検査
今回はアトピー性皮膚炎で測定する採血項目を解説しました。
代表的な検査項目はIgE値、TARC値だと思います。
その他、治療内容によって行う採血項目が加わってきます。
アトピー性皮膚炎において採血検査は、その方の「背景」を理解するための一つの選択肢です。
採血結果の数値だけでその方のアトピー性皮膚炎の状態を理解できるものではなく、総合的に評価することが大切です。
採血結果の解釈がわからなければ診察時にお尋ねください。
ㅤ
※ 基準値は施設により異なりますので、検査結果をご確認ください。
