アトピー性皮膚炎の治療薬「デュピクセント」をご紹介します。
【まとめ】デュピクセント(デュピルマブ)
・アトピー性皮膚炎の治療薬:生物学的製剤(抗体医薬品)
・IL-4とIL-13の働きを抑えます
・一定の条件を満たした人(主に重症者)に使用できます
最近、重症のアトピー性皮膚炎の患者さんに恩恵のある治療薬が多数でてきました。
なかでも口火をきったのが、2018年04月に薬価収載・販売された「デュピクセント」です。
当初は15歳以上のみでしたが、2023年9月から生後6カ月以上の小児にも使用できることになりました(適応拡大)。
デュピクセント(デュピルマブ)とは

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デュピクセントは、最近の創薬の発展によって作られるようになった生物学的製剤(抗体医薬品)です。
アトピー性皮膚炎の炎症を起こす「IL-4」と「IL-13」というサイトカインの働きを抑えます。
皮下に注射するお薬です。分子量がとても大きいので、飲んだり塗ったりしても効きません。

投与可能な方
デュピクセントの処方や投与は、保険で制限されています。「今までの治療でどうしても治りにくい方に使いましょう」という制限です。もう少し具体的に書くと、
- 既存治療(ステロイド外用薬やタクロリムス軟膏など)を6ヵ月以上行っていても症状が強い方
- 生後6カ月以上で体重5kg以上の患者さん
そして、処方できるのは経験豊富な皮膚科医・小児科医(または経験豊富な皮膚科医・小児科医が責任者として勤務する病院)のみです(施設要件)。
導入希望の方へ
皮膚症状の重症度を診察にて確認する(重症度のスコア(点数)をつける)必要があります。まずは診察にて医師にご確認ください。
投与のスケジュール
投与スケジュールは、体重によって異なります。
ここでは成人(保険治療薬の成人は15歳以上のことを指します)について述べます。
投与間隔は2週間に1回皮下注射を行います。
初回のみ2本(600mg)となりますが、それ以降は1本(300mg)です。

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ご自宅で自己注射が可能ですが、はじめの数回は当院にて打ち方の指導をいたします。
デュピクセントの主な副作用
主な副作用は、以下の通りです。
- 結膜炎:目やまぶたの炎症症状(赤み、腫れ、かゆみ、乾燥など)がみられる場合があります。
- 注射部位反応:注射をした部位に発疹、腫れ、かゆみなどの症状を生じることがあります。
- 好酸球増多症:血液中の好酸球数が一時的に上昇する。
- 重篤な副作用としてアナフィラキシーを起こす可能性がありますが頻度は稀です。
医療費助成制度
お薬の費用は高いと感じられるかもしれませんが、医療費の助成制度を利用できることもあるので、ご自身が当てはまるかお調べください。
自己負担額はこちらを参照ください。
高額医療制度
年収によっては高額医療制度を利用できます。高額医療制度とは、医療機関や薬局の窓口で支払う1か月分(歴月:1日から末日まで)の医療費で上限額を超えた場合、その超えた額が支給されます。
上限は年収により変わります。
付加給付
ご加入の医療保険(保険者)によっては独自の「付加給付」があり、国が定めるよりも手厚い医療費助成を行っている場合があります。
詳しくはご加入の健康保険証に記載されている保険者(健康保険組合等)にご確認ください。
その他
自治体によって子供への医療費補助制度(お問い合わせ先:お住まいの市区町村)や、ひとり親家庭への医療費補助制度(お問い合わせ先:お住まいの市区町村)、大学などの学校によっては学生などへの医療費補助制度(お問い合わせ先:学生課など)が使用できる場合がございます。
他院にて導入済みの方で、当院にて処方を継続したい方へ
転居や、通院先が遠方などの理由で、当院にてデュピクセントの処方を継続したいという患者さんがおられるかと思います。当院でも処方を引継ぐことが可能です。その際は、前医の紹介状(情報提供書)を持参していただくようお願いい達します。
紹介状(情報提供書)には以下の項目を含めてもらうようにお願いいたします。デュピクセントを初めて導入したときの適応要件で、保険の請求のために必須となります。導入された先生も、毎回、保険請求のときに記載されている内容ですのでお話すれば分かっていただける内容かと思います。紹介状(情報提供書)には時間がかかることがありますので、余裕をもって担当の先生にご相談ください。
- 前治療要件
- 導入時の「IGAスコア」
- 導入時の「EASIスコア(全身、頭頸部)」
- 導入時の「病変割合」
口頭での伝言や、上記の記載がない紹介状(情報提供書)の場合は継続することができません。スムーズな引継ぎのため、何卒よろしくお願いいたします。
一旦デュピクセントを中止するも再度悪化したため再導入をご希望の場合、情報提供書は不要です。ご相談ください。