アトピー性皮膚炎の治療薬であるモイゼルト軟膏について解説します。
【まとめ】
・PDE4阻害薬の外用薬です
・塗り続けると徐々に効果がでます
・ステロイド外用薬のような皮膚の菲薄化、毛細血管拡張の副作用はほぼありません
・主な副作用はニキビ、毛包炎、色素沈着、そう痒
モイゼルト軟膏の承認の歴史

モイゼルト軟膏(ジファミラスト)は、日本初となるホスホジエステラーゼ4(PDE4)阻害剤の外用薬です。
ステロイド外用剤や免疫抑制外用剤とは異なる新しい作用をもつ塗り薬です。
モイゼルト軟膏は2021年9月に承認され、2022年6月に発売されました。当初の添付文書では「~2歳未満の幼児の乳児を対象とした有効性及び安全性を指標とした臨床試験は実施していない(≒2歳未満では原則使用を避ける)」とされていましたが、生後3ヵ月以上2歳未満の臨床試験の結果により効果と安全性が確認されたため、2023年12月に「~生後3箇月未満の乳児を対象とした有効性及び安全性を指標とした臨床試験は実施していない(≒生後3ヵ月では原則使用を避ける)」の記載に変更されました。
モイゼルト軟膏の機序
PDE4は、炎症を抑える信号を分解して、炎症を増幅してしまう酵素です。
モイゼルト軟膏はこのPDE4を阻害することで、炎症を抑える信号の作用を増強し、アトピー性皮膚炎の炎症を抑えます。

使い方
1日2回、適量を患部に外用します。
適量は以前解説したFTUを参考に塗ります。

現在のところ、年齢に応じて以下のように使い分けます。
● モイゼルト軟膏1% 16歳以上の成人むけ
● モイゼルト軟膏0.3% 生後3ヵ月以上の小児むけ
小児は症状に応じて、1%を使用することができます。
プロトピック軟膏(タクロリムス)、コレクチム軟膏(デルゴシチニブ)と異なり、1日あたりの塗布量の制限はありませんので、湿疹の範囲に応じて適量を外用することとなります。
効果と副作用
モイゼルト軟膏は残念ながらステロイド外用剤ほどの即効性と効果は期待できませんが、塗り続けることで徐々に効果が発揮されます。
また、副作用はその分少ない印象です。主な副作用はニキビ、毛包炎、色素沈着、そう痒です。
なによりもステロイド外用剤でみられる皮膚委縮や毛細血管拡張はまずみられず、プロトピック軟膏(タクロリムス軟膏)のような刺激感がまずでないという点では、非常に使いやすい軟膏です。状況を選べば効果的に使用できると思います。
そして生後3ヵ月以上の小児に安全性が確認されて添付文書が改定されたので、大変使いやすくなったと思います。
アトピー性皮膚炎の治療選択肢がどんどん増えてきており、本当に喜ばしいことです。
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図の一部は大塚製薬のパンフレットより引用いたしました。
※ 2025年2月に修正いたしました。