ワキ汗(原発性腋窩多汗症)の治療薬「エクロックゲル」をご紹介します。
多量のワキ汗による衣服の染みやにおいが気になる方、多汗症は皮膚科で治療できます。
【まとめ】エクロックゲル(ソフピロニウム)
・ワキ汗(原発性腋窩多汗症)に対する抗コリン薬の外用薬
・診断基準を満たすことを確認し、その他の条件を満たした場合に処方をうけることができる
「原発性腋窩多汗症」の患者さんは国内で約530万人、経済的損失は年間3兆円を超すと推計されています1)が、わざわざ病院に罹って治療していない方のほうが多いのではないでしょうか。
一方、最近になり新しい薬剤が保険適応になり、提供できる治療が増えています。
ワキ汗でお悩みの方、ぜひこの機会に皮膚科の受診をご検討ください。
原発性腋窩多汗症
「原発性腋窩多汗症」とは、腋窩(ワキ)に明らかな原因がないまま6カ月以上も過剰な発汗を認め、以下の6症状のうち2項目以上あてはまる場合に診断されます。
原発性腋窩多汗症の診断基準(Hornbergerらの診断基準)
- 最初の症状がでるのが25歳以下であること
- 左右両方で同じように発汗がみられること
- 睡眠中は発汗が止まっていること
- 1週間に1回以上多汗の症状がでること
- 家族にも同じ疾患の患者さんがいること
- わき汗によって日常生活に支障をきたすこと
エクロックゲル(ソフピロニウム)

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エクロックゲル5%は2020年9月に保険で承認された、日本初の原発性腋窩多汗症(ワキ汗)の保険治療薬です。
ワキの発汗は、交感神経から出るアセチルコリンという物質が汗腺に指令を与えて生じます。
原発性腋窩多汗症の患者さんは、この指令が激しく生じるためワキ汗が多量となります。
エクロックゲルはこの指令をブロックします。

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重症度評価(HDSS: Hyperhidrosis Disease Severity Scale)で3以上「発汗はほとんど我慢できず、日常生活に頻繁に支障がある」の方以上に使用できます。
なお、閉塞隅角緑内障、前立腺肥大による排尿障害がある方はご使用できません。
HDSS(16歳以上用)
- 1 発汗は全く気にならず、日常生活に全く支障がない
- 2 発汗は我慢できるが、日常生活に時々支障がある
- 3 発汗はほとんど我慢できず、日常生活に頻繁に支障がある
- 4 発汗は我慢できず、日常生活に常に支障がある
ラピフォートワイプの主な副作用
主な副作用は、以下の通りです。
- かぶれ(接触皮膚炎):薬の塗布部位がかぶれて、赤くかゆくなることがあります。中断の上、医師にご相談ください。
- 口の渇き:唾液が出にくくなることがあります。医師にご相談ください。
- 視界がぼやける、光をまぶしく感じる:速やかに使用を中止し、回復するまでは車の運転や危険を伴う機械の操作は行わないでください。また医師にご相談ください。
- 尿が出にくい、尿の勢いが弱くなる、尿が近くなる:中断の上、医師にご相談ください。
- 体温調節の異常:涼しい場所に移動し、体を冷やすなど体温を下げ、水分・塩分を補給してください。速やかに医療機関を受診してください。
参考文献
1) Murota H et al. J Dermatol 48: 1482-1490, 2021