【まとめ】亜鉛華単軟膏・亜鉛華軟膏
・皮膚の保護や収斂作用を目的に用いる
・軽微な消炎作用と抗菌作用を持つ
・おむつかぶれ、ジュクジュクした部位などに用いる
・亜鉛華単軟膏と亜鉛華軟膏の違いを解説
亜鉛華単軟膏・亜鉛華軟膏はどのようなお薬ですか?
亜鉛華単軟膏・亜鉛華軟膏は、どちらも「酸化亜鉛」という成分を含んだ、真っ白で少し硬めの塗り薬です。どちらも単独では、ステロイドは含まれておりません。
収斂(しゅうれん)作用
亜鉛華単軟膏や亜鉛華軟膏の働きを語る上で欠かせないのが、酸化亜鉛が持つ「収斂(しゅうれん)作用」です。 少し難しい言葉ですが、簡単に言うと「皮膚をキュッと引き締めて、ジュクジュクした汁(浸出液)を抑える働き」のことです。(医学的には、タンパク質を変性・凝固させることで組織表面を引き締め、皮膚や粘膜からの滲出液・分泌液を減少させる作用を指します。)
皮膚を治す4つのバリア効果
この「収斂作用」によって皮膚の表面に保護膜ができると、具体的に以下のような4つの良い効果が生まれます。
・ジュクジュクを乾かす: 湿疹や傷口から出る余分な汁を減らし、患部をスッと乾かします。
・刺激から守る: 引き締まった皮膚の表面がバリアとなり、衣服との摩擦や、便・尿といった外部からの刺激を物理的にブロックします。
・軽い炎症を抑える: 表面の細かな血管を少し縮めることで、軽い赤みや腫れ(浮腫)を和らげます。
・細菌が増えにくい環境を作る: 皮膚の表面が引き締まって乾燥することで、ジメジメした環境を好む細菌が繁殖しにくい状態を保ちます。
強すぎず、安全性が高い「優しいお薬」
このように聞くと非常に強いお薬のように感じるかもしれませんが、実は逆です。 亜鉛華単軟膏や亜鉛華軟膏は、ステロイドや抗生物質のように「強い成分で直接的に病気を叩く」というよりも、「皮膚を優しく保護して、自然に治っていくのを助ける」というサポート役のお薬です。
そのため、重篤な副作用が起こることはほとんどなく、皮膚がデリケートな赤ちゃんのおむつかぶれから、ご高齢の方のただれまで、幅広い世代に安全に使用していただけます。
主にどのような症状に使われますか?
おむつかぶれ、とびひ(伝染性膿痂疹)、ジュクジュクした湿疹、あせもなどに用いられます。
塗り方
「おむつかぶれ」の場合
「おむつかぶれ」の場合、普通のクリームのように皮膚にすり込むのではなく、患部に「乗せる」「厚めに覆う」ように使うのがポイントです。白い軟膏で下の皮膚がすっぽりと隠れるくらい、たっぷりと厚く乗せてください。
便や尿の刺激からデリケートな皮膚をしっかり保護するために、分厚く塗ることが大切です。使い捨ての紙おむつをご使用であれば、軟膏がついて汚れてしまってもそのまま捨てられるため、ためらわずに厚く塗っていただいて問題ありません。拭き取る場合、汚れた部位が取れれば多少残っていても塗り重ねてください。すべて拭き取ろうとしなくても構いません。
ステロイド外用薬と「混合」で処方された場合
調剤薬局で他のステロイド外用薬と混ぜて処方された場合、多くの場合、主役となるお薬の働きを助けるサポート役となります。この場合は、皮膚がすっぽり隠れるほど分厚く乗せる必要はありません。一緒に混ざっている主役のお薬の基準(ティッシュが軽く張り付く程度など、通常の外用薬の目安)を参考にして、優しく塗布してください。
ガーゼに伸ばして患部に貼る方法
当院では、「ガーゼにたっぷり伸ばしてから患部に貼ってください」という使い方をお願いすることがあります。これは「重層療法」や「密封療法(ODT:Occlusive Dressing Technique)」に準ずる皮膚科特有の治療法で、治りにくいジュクジュクした湿疹や、掻きむしって分厚くなってしまった皮膚に対して効果を発揮します。
ガーゼの上に、お薬を1〜2mmほどの厚さになるように均一に伸ばします。イメージとしては、「食パンにバターをたっぷりと厚く塗る」ような感覚です。
ガーゼに伸ばすことで、お薬の成分がより深く、効率的に浸透していきます。
また、ガーゼを貼ることで、爪での掻きこわしや、衣服による摩擦などの刺激から皮膚を物理的に守ります。
この方法は非常に効果的ですが、患者さんの自己判断では絶対に行わないでください。適応を見極めてご案内しております。症状がよくなれば、ガーゼによる貼付は終了してください。
亜鉛華単軟膏・亜鉛華軟膏の「落とし方」
亜鉛華単軟膏は水を弾く力がとても強いため、落ちにくいことがございます。
まずはお湯でそっと撫でて落としてみて下さい。
間違っても、ゴシゴシと擦らないでください。無理に擦ると、せっかく治りかけている皮膚を傷つけてしまいます
お湯で洗い流しても落ちにくい場合は、ベビーオイルやオリブ油などをたっぷりなじませて、軟膏をフワッと浮かせてから、ティッシュやガーゼで優しく拭き取ってみてください。ご希望がございましたら、オリブ油を別途処方することも可能ですのでご相談ください。
お風呂上がりなどに、以前塗ったお薬が皮膚にうっすらと白く多少残っていても、完全に落とし切る必要はありません。そのまま上から新しいお薬を重ね塗りしていただいて大丈夫です。
特に「おむつかぶれ」の場合、拭き取ろうとする摩擦で悪化する場合がございますので、一生懸命に亜鉛華単軟膏・亜鉛華軟膏を落とそうとせず、汚れた部位が取れれば多少残っていても塗り重ねてください。
亜鉛華“単”軟膏と亜鉛華軟膏の違い?
「亜鉛華単軟膏」と「亜鉛華軟膏」は、名前に「単」という文字が一つ入っているかどうかの違いしかありませんが、実は皮膚科の治療においては使い道が若干異なる「別のお薬」です。効能・効果は同じです。
どちらも皮膚の炎症を鎮める「酸化亜鉛」という同じ有効成分を含んでおり、含まれる量が異なります。また、有効成分を溶かし込んでいる「ベースとなる油(基剤)」の種類が異なります。
| 名称 | 亜鉛華軟膏 | 亜鉛華単軟膏 |
|---|---|---|
| 有効成分 | 酸化亜鉛 100g中 酸化亜鉛 20g | 酸化亜鉛 100g中 酸化亜鉛 10g |
| 基剤(ベースとなる油) | サラシミツロウ、ソルビタンセスキオレイン酸エステル(乳化剤)、白色ワセリン、流動パラフィンなど | 大豆油(またはナタネ油)、サラシミツロウ(またはミツロウ)、ジブチルヒドロキシトルエンなど |
| 特徴 | 基剤に乳化剤を含有しているため、滲出液の吸収性に優れている | 患部の保護作用に優れている ミツロウが配合されているために、若干淡黄色 |
当院では、表・右の「亜鉛華単軟膏」を使用することが多いですが、ときに「亜鉛華軟膏」を使用することがあります。
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Q ステロイドは入っていますか?
「亜鉛華単軟膏」単独では、ステロイドは含まれておりません。ただし、ステロイドの外用薬と混合して処方されることはあります。
Q 細菌の増殖を抑えるとありますが、抗生物質とは違うのですか?
はい、異なります。抗生物質は細菌そのものを直接攻撃して殺すお薬ですが、酸化亜鉛は細菌を直接殺すわけではありません。「患部を乾燥させて、細菌が住みにくい環境を作る」ことで、間接的に細菌が繁殖するのを防いでいます。
Q 「収斂(しゅうれん)作用」とは、要するにどういうことですか?
レモンや梅干しを食べたときに、口の中が「キュッ」とすぼまる感覚をご存知でしょうか。あれがまさに収斂作用です。お薬の成分によって、ジュクジュクして緩んだ皮膚の表面を「キュッ」と引き締め、汁を出にくくして乾燥させる働きのことです。
Q 「ボチ」と呼ばれることがあるようですが、なぜですか?
ドイツ語の「Bor-Zink-Salbe(ボール・ツィンク・ザルベ:ホウ酸亜鉛華軟膏)」の略称からきているという説が有力です。かつて「ホウ酸亜鉛華軟膏」というお薬がありましたが、ホウ酸の安全性が問題視され、現在はホウ酸を含まない安全な「亜鉛華軟膏」や「亜鉛華単軟膏」が処方されます。過去に使用されていた「ホウ酸亜鉛華軟膏」はドイツ語で「Bor-Zink-Salbe」と書きますが、「Bor」と「Zink」の頭文字を組み合わせて、当時の医師たちが「Bo-Zi(ボチ)」と呼んでいました。その呼び名が、現在の「亜鉛華軟膏」や「亜鉛華単軟膏」でも慣習的に引き継がれ、今でも医療現場で広く親しまれています。
この記事の執筆・監修:
上田 喬士
東小金井うえだ皮ふ科 院長 、日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医 / 日本アレルギー学会認定 アレルギー専門医、医学博士