塗り薬の適量
Q どれくらい塗り薬を塗ればよいですか?
内服薬であれば「1回XX錠」と明確な量が決まっています。そのため、誰でも1回に飲む薬の量は同じはずです。
では、塗り薬はどうでしょう?
塗り薬は「XXg」とか「XX本」とかで処方されますが、1回に塗る量を指定することはないので、人によってバラつきがあります。1回1回正確に「XXg」と測って塗るのは現実的ではありません。
そこで、塗る量の目安(外用薬の適量)が提唱されていますので、いくつかご紹介します。
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FTU(Finger Tip Unit)
最も有名なのが「FTU(Finger Tip Unit)1)」という目安です。
軟膏チューブの場合、人差し指の先から第1関節まで薬を乗せた量が1FTUです。
ローションの場合は、1円玉大が1FTUになります。
1FTUを、手のひら2枚分の面積(体表面積の約2%)に塗るとちょうどよい分量になります。

FTUの考え方は、本来はステロイド外用薬を塗るときの目安として報告されたものです。
しかし、現在ではステロイド外用薬以外の多くの軟膏で外用の目安として用いられています。
別の決まりがある塗り薬もありますので、医師や薬剤師から別に指導を受けた塗り薬はそちらに従ってください。
FTU以外のその他の目安
少し大雑把な表現ですが、古くから「ティッシュがひっつくくらい」「軽くテカるくらい」が塗り薬の適量と表現されます。
それくらいを目安に、しっかりした量を塗りましょうということだと思います。

あくまで目安
ここまでご紹介した塗り薬の指標は、あくまで目安です。
絶対にこの量を塗らないといけないというものではありません。
指導される先生によっては、重症の初期治療に限り2FTUの外用を勧める先生もおられます。
一方、症状が落ち着けば1FTUよりも少ない外用量でコントロール可能なこともあります。
長い療養期間となる病気の場合には、「あくまで目安」と考えてこだわりすぎないことが重要だと思います。
十分量を外用できた時のイメージ図
外用剤を十分な量ぬることができると、以下の図のようにムラが生じず湿疹部位に均一に効果を発揮します。

広範囲に塗るとき
広範囲に塗る場合、まず軟膏を何カ所かに分けて、ちょんちょんと置きます。
その後に全体にやさしく手のひらで広げます。
1カ所に置くとなかなか広がりません。

Q 塗るときは擦りこんだ方が効きますか?
軟膏を広がるときは、やさしく手のひらで広げます。
擦りこむのではありません。
擦り込んでも薬は多く浸透するわけではありません。
搔いているのと同じくらい強く擦っている人がいますが、強く擦りこむと皮膚を傷つけます。
塗り広げる方向
外用薬を塗るときは、皮膚のシワに沿って横方向に広げるとよいです。
人の体はだいたい横方向にシワができています。
縦方向に広がるとムラができやすくなります。

塗らない薬は効かない
当たり前ですが、処方しても患者さんが塗ってくれていなければ良くなりません。
同様に、副作用が怖くて薄く塗っていて思うように改善しないというケースが多々あります。
毎日塗るのは大変なことですが、まずは短期集中でしっかりした量を塗りましょう。
期限について
チューブなどの外用剤は、開封せず適切に保管していれば記載されている「使用期限」まで使用できるでしょう。
一方、開封した軟膏についてはどうでしょうか?
これは保管状態にもよりますが、薬局での混合剤は3ヵ月以内、チューブなどの外用剤は開封後6ヵ月以内を目安に使用しましょう。
長時間経過したものは、安定性が損なわれて手指の細菌により汚染されますので破棄しましょう。
また、外見がおかしければ破棄、ご相談ください。
ときどき「数年前に処方された塗り薬を塗った」という患者さんがいらっしゃいますが、衛生状態を考えると好ましいことではありません。新しく処方しなおしますので、ご相談ください。
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参考文献
1) Long C C, Finlay A Y. Clin Exp Dermatol 16: 444-447, 1991