皮膚科の疾患の多くが「かゆみ」を伴うため、全ての疾患を網羅することは困難です。
ここでは代表的な疾患について簡単な解説をいたします。
アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎は、皮膚のバリア機能が低下し、強い「かゆみ」を伴う湿疹が良くなったり悪くなったりを繰り返す病気です。
若年者の約1割に見られる身近な皮膚の病気ですが、年齢が進むにつれて治ることも多くあります。
たとえ完治(寛解)に至らなくても、適切な治療を続けることで、日常生活に支障がないほど症状を軽くコントロールできるケースがほとんどです。

アトピー性皮膚炎は、遺伝的要因と環境要因の両者が影響して発症します。
たとえば、皮膚のバリア機能に関わる遺伝子の異常がアトピー性皮膚炎の患者さんの一定数にみられます。
じん麻疹(蕁麻疹)
蚊に刺されたような赤いボコッとしたかゆい皮疹やミミズばれのような皮疹がでます。一過性に出現し、原則的に個々の皮疹は24時間以内に消えてなくなります(消退します)。多くはかゆみを伴いますが、まれにチクチクした痛い感じを伴うこともあります。
一生のうちに5人に1人は経験する病気といわれています。

赤い皮疹の大きさ、形はさまざまです。数mmから巨大なものから、円形、線状、地図状など様々です。
原因には様々なものがあります。食べ物によるじん麻疹を思い浮かべる方が多いようですが、その他にも外気の温度の変化、機械的刺激、日光、薬などが原因になります。原因がよくわからない(特発性)方もいらっしゃいます。
かぶれ
化粧品、金属、植物、洗剤など、皮膚に触れた物質が原因で炎症を起こします。
例えば、湿布によるかぶれ、アクセサリーやベルトなどの金属によるかぶれ、ウルシ科の植物によるかぶれ、日常の様々なものでかぶれが起こります。お子様であればよだれ、便、食べ物の刺激で皮膚が赤くかぶれます。
刺激性のかぶれと、アレルギー性のかぶれがあります。
原因物質を避けることが最も重要です。

皮脂欠乏性皮膚炎
加齢や季節の変化で皮膚の水分・油分が不足し、細かい亀裂や粉ふき、かゆみが生じます。特に冬場に悪化しやすく、すね・腰回り・背中に多く見られます。掻くと赤みや湿疹が広がり、さらにかゆみが強くなる悪循環が起こります。治療は保湿剤の徹底と、炎症が強い部分には短期間のステロイド外用薬を使用します。入浴時の洗いすぎも悪化要因です。

結節性痒疹
結節性痒疹は、強いかゆみを伴う硬い盛り上がり(結節)ができる皮膚の病気です。
この盛り上がり(結節)は5mm~2cm程度で、非常に強いかゆみを伴います。
痒疹
痒疹とは、激しいかゆみを伴う、ポツポツとした硬い盛り上がりが多発する状態です。多くの場合は複数生じますが、それぞれが基本的に孤立していて癒合しません。痒疹は虫刺されに引き続いて生じたり、アトピー性皮膚炎の方に生じたり、内臓疾患に合併して生じたりすることがありますが、誘因がはっきりしない方もいます。
皮膚そう痒症
明らかな皮膚の症状がないのに「かゆみ」が続く状態です。内臓疾患(肝・腎・甲状腺)などが背景にあることがあります。皮膚を掻き続けることで二次的に湿疹が生じることもあります。
疥癬(かいせん)
ヒゼンダニという寄生虫が皮膚に寄生して起こる疾患です。強いかゆみを生じますが、特に夜間にかゆみが増強します。指の間、手首、腹部などに小さな赤い発疹やトンネル状の線(疥癬トンネル)が見られることがあります。治療は抗寄生虫薬の内服や外用です。
虫刺され(蚊・ダニ・ノミなど)
虫に刺された部位に赤みと強いかゆみが出ます。掻くことで腫れたり湿疹化したりします。蚊、ブヨ、ハチ、ノミなど色々な虫が原因となりますが、特徴的な分布・形でなければなかなか原因の虫まで特定は難しいケースも多いです。治療はどのような虫刺されでも、ステロイド外用薬、抗ヒスタミン薬が中心です。
貨幣状湿疹
小判(貨幣)のように丸く、くっきりとした境界を持つ湿疹が手足や体幹に現れる病気です。その名の通り、丸い形をした湿疹が特徴で、非常に強いかゆみを伴います。表面がジュクジュクと湿ったり、黄色いかさぶた(痂皮)が付着したりすることが多いです。冬場の乾燥した肌に起こりやすく、一度良くなっても同じ場所に再発しやすい非常に頑固な湿疹です。
自家感作性皮膚炎
もともとあった一箇所のひどい湿疹がきっかけとなり、全身に激しい湿疹が広がってしまう状態です。「足のひどい湿疹を放置していたら、数日後にお腹や腕にも細かいブツブツが広がってきた」というケースが典型的です。これは、元の湿疹(原発巣)で生じた炎症物質や細菌の成分などが、血液を介して全身に運ばれ、自分の皮膚そのものに対してアレルギー反応を起こしてしまうために起こります。全身に広がるブツブツは「散布疹」と呼ばれ、耐え難いほどの強いかゆみを伴います。
かゆみのメカニズム
「痛み」に比べて「かゆみ」の研究は遅れており、まだまだ不明な点がたくさんあります。
以前は「痛み」と同じ神経の経路をたどると考えられていた時代もありますが、現在は別物と認識されています。
古くから「末梢性のかゆみ」「中枢性のかゆみ」の2種類に分ける考えがあります。この考えは比較的わかりやすいため、簡単にご紹介します。
1)末梢性のかゆみ
皮膚に病気があり、生じるかゆみです。
「湿疹」、「蕁麻疹」が代表的です。
それぞれの病気ごとに治療法が異なります。
2)中枢性のかゆみ
皮膚には何も症状がないが、脳や神経のシステム自体が過敏になり生じるかゆみです。
例えば「腎臓が悪くて透析している患者さんのかゆみ」、「肝硬変の患者さんのかゆみ」などです。内臓に問題があることが多いです。この手の痒みは難治です。
「かゆみ」への対応法
かゆみには、共通の対応法がありますのでご紹介します。
1)冷やす
「かゆみ」は一般的に皮膚が温まるとかゆみが増します。
冷えるとかゆみが軽減します。
そのため、保冷剤などをタオルで包み皮膚にあてて冷やしてみましょう。
冷やしすぎると凍傷(低温やけど)の恐れがあるため、感覚がなくなるほど長時間あて続けるのは避けましょう。
2)避けるべき食べ物・飲み物
一般的に「かゆみ」を悪化させる食べ物・飲み物があります。
例えばアルコールや刺激物、辛い食べ物です。
絶対にダメというわけではありませんが、控えめにしましょう。
3)爪を短く整えておく
なるべくお肌を傷つけないように、爪は短く整えておきましょう。
爪やすりを使うと効果的です。
4)保湿
皮膚が乾燥していれば保湿をしましょう。
保湿剤はこまめに塗りましょう。
掻いても責めないで!
搔いてしまっても自分を責める必要はありません。
また、掻いてしまったお子さんを叱らないであげてください。
「かゆみ」は物凄く強い欲求ですから「掻かない」のは大変難しい事です。
掻いてしまった過去よりも、今後どのように対応していくのか前向きに考えましょう。
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※写真掲載は患者さんの許諾を得ています。一部は写真ACより引用。